芸人と麻薬

https://youtu.be/cxvVKY6vTGs

 

千原ジュニアの仮説では、芸人は麻薬に手を出さないということだ。なぜならば「笑い」

そのものが麻薬だからだ。

自分は、売れなくても続けているベテラン芸人はある種の何時か逆転を夢見ているギャンブル中毒だと思っていたが、どうも舞台等で客からの笑いという反応を求め続ける麻薬中毒のような感じがしてきた。

それが故に、辞められない。島田紳助はM1を創立したのは燻っているベテラン芸人に人生の方向転換を促すためとのべていたが、それは紳助自身が笑いをビジネスとして捉えているからこそだろう。

リットン調査団というお笑いコンビも笑いにとりつかれたといってよい。特に水野は職人肌の人間で純度の高い笑いを求め客への媚び拒絶し、ニーズはそれなりにあるにも関わらず本職は半ば開店休業のような様相でバイトがメインになっている。

リットン調査団ダウンタウンとほぼ同期だがその世代ではビッグブラザーズという漫才コンビもいた。若手時代は関西地方でダウンタウンと人気を2分していた位だから相当な実力者であったのだろう。それからダウンタウンは東京に進出して全国的な人気を得た。一方ビッグブラザーズはどうなったのか。

 

ビックブラザーズは早期にコンビを解消していた。テレビのドキュメンタリーでそれ以降の活動が片割れの竹井輝彦の密着取材という形で取り上げられれていた。ピンとして活動後、何本かレギュラーを抱えていたがそれらも打ち切られ泣かず飛ばずの状態が続き事務所も転々としているようだ。

個人ライブも閑古鳥が泣いている。では芸はどうかというとやはりダウンタウンとしのぎを削っていただけあって達者だなという印象を持った。声も浜村淳のように聞き取りやすく天性のトーク力のようなものが感じられた。だから、若手に混じって養成所に通い講師に指導を受けている場面には、一度は売れた人間の殊勝さというより卑屈さが垣間見えてしまう。それは同時に押しの弱さともいえ、それであるがゆえに人生の勝負所で踏ん張れなかった要因でもあるまいか。

 

紳助のようにお笑いをビジネスと捉えている訳でもないし、リットンの水野のように求道者でもない。では、この人がそこまで芸人行にこだわり続ける理由はなんなのか、それが番組の後半箇所で明らかになる。

 

竹井輝彦には兄がいたらしいが、不慮の事件により亡くなり、その日を境に母親は哀しみに伏し続けている。そんな母親に自分の芸を見せて笑顔を取り戻して欲しいのだという。

そのエピソードを聞いて、この人の勝負弱さの遠因を知った思いがした。やはり勝負事にはエゴが必要だと思うのだ。

しかし、当人の目的がそこにある以上、別に売れる売れないとか勝ち負けはどうでも良いのでは無いのだろうか。それらは母親を笑わせたいとは、全く別次元の問題だからである。

 

https://youtu.be/31Z_x-o-G9