森元社長の追放劇

ビートたけし森昌行元社長は長年のつきあいを、マスコミの報道によると金銭的な諍いで袂をわかった。ではプロデューサーの手腕としてはどうだったかというと高給に値する働きは十二分にしていたかと思う。タレントとしてのビートたけしの節目となる部分では必ずその姿を目にしていた。フライデー事件や事故復帰の際にも、たけし不在の間に相当の根回しが必要であったはずだ。あと北野武という文化的な側面をだして他のタレントと差別化する事にも成功した。かつて「噂の真相」では森元社長のことを武映画の裏監督と言っていた程だ。そういえば、映画公開前には武は宣伝活動の一環として相当のインタビューを受けるのだが、創作に関する質問に及ぶとかなりの部分「森社長が、、」という枕詞を使っていた。よく知られていることだが、久石嬢や鈴木慶一にサントラを依頼したのもミュージシャン志望であった森元社長ならではの発想だった。少なくとも武にはそのセンスは無いように感じる。アウトレイジもシリーズ化する予定は無かったが森元社長に、このようにストーリーをつなげたらどうかと言われシリーズ化し、商業的にも成功させた。ここまで創作に関して依存すると、おそらく武としては一番のブレインにジェラシーに似た感情を抱いたところで不思議はない。


中国の故事で、狡兎死して走狗烹らるという言葉がある。ご主人の為にうさぎを捕まえていた狩猟犬が、獲物がいなくなった後食べられてしまうという意味だ。転じて、外敵がいなくなったナンバー1にとって一番恐れの対象となるのは、有能なナンバー2なのだ。

トップというのは孤独なもので周囲がそそのかすのも簡単だ。今回の森元社長に取りざたされた金銭的な問題も取って付けたような気もしたし、野心をもった人間達による下克上または追放劇と見ることが出来ると思う。